日本財団 図書館


 

は驚くほど勤勉なのに、仕事に直結しない面では驚くほど物ぐさで怠け者であるというのが、我々日本人が今、国際社会へ出て行った時に品位が無いと言われている1番大きな理由の1つなのではないかと思います。
与えられた仕事や義務をきちんと果たすだけでは人間としては一人前ではないのだと。
人間というのは試すべき事を試す、或いはしてはいけない事(犯罪に属するような事)はやらない、これだけでは必要条件は満たしているかもしれませんが、人間として生きていくための十分条件というか、「いい人生を生きたなあ、いい人だなあ」と言われるためには、しなくてもいいけれどもしたほうがいい事、人の役に立っ仕事等、これらをやるかやらないかで、人間の価値というのは決まってくるのではないか。
基本的には勿論悪い事はしない、そしてやらなければならない事をやるというのは絶対に必要条件なのですが、どうも日本人は「それだけでいいや」としてきたのではないか。
プラスアルファの部分、我々が生きている価値、我々が与えられた人生を価値あるものにするには、それ以上のプラスの部分に何をやるのか、というのがいま問われているのではないでしょうか。
日本が貧しい頃は、とにかく食べるだけで精一杯、試すべき事をちゃんとやるだけで精一杯でした。例えば女の人生をみても、昔の女の人の場合は一生のうちに4人も5人も子どもを産み育てました。明治時代の私の祖母あたりの世代ですと8人も9人も産んで、その一方で電気釜も洗濯機も無く家事をやり、おまけに農業をやったり、商工業をやったりで手一杯でした。社会のため、人のために役に立つことを言われても、正直な話なかなか出来ない人が大部分だったと思います。しかし今、これだけ豊かになった日本で女の人達が一生に産む子供の数は1.43人というように大変少なくなってきており、家事はとても楽になってきている中で、私達が使える時間とエネルギーというのは物凄く膨大なものになってきています。
女性の場合はこういう形で、自分たちのしたい事、出来る事がやれるというのは、はっきり見えるわけですが、本当は男性達の場合も、「ワーカーホリック」と言われている場合でも、1年間の労働時間というのは2000時間を切っているわけです。1年間で2000時間を切っており週休2日であるというような時に、忙しくて忙しくて後は何も時間が残っていないというのは、ちょっと甘えなのではないでしょうか。
余談になりますが、人間の生活時間を1次時間、2次時間、3次時間というような分け方をする考え方があります。
1次時間というのは生きていくために必要な時間で、例えば睡眠時間や食事をする時間や身の回りの事をする時間で、これは貧しい社会であろうが豊かな社会であろうが変わりません。1日に9時間くらいは絶対必要だというような世界です。
2次時間というのが労働時間で、職場へ通い働いて給料を貰う時間、或いは家庭にあって家事、育児、介護というような労働に勤しむ時間ですが、日本人はその職場の労働時間が世界で1番長く2000時間を割ったところです。ドイツやフランスですと1年に1650時間や1700時間位です。まだまだ日本は労働時間を減らさなければならないと言われていますが、日本の男性の場合は職場で働く時間に家庭の労働時間を足すと、アメリカ・ドイツ・フランス等のいわゆる先進国の男性の労働時間より短いのです。労働時間といってもお金になるような報酬を伴う活動をする労働時間と、報酬は伴わな

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION